映画「破戒」ネタバレあらすじ結末と感想

破戒の紹介:2022年日本映画。明治・昭和にかけて活躍した詩人・小説家の島崎藤村が1906年に発表した同名小説で、過去に2度にわたって映画されな作品を間宮祥太朗の主演で再々映画化した文芸ドラマです。被差別部落出身であることを隠して生きてきた主人公の教師が同じ出目の活動家との出会いや士族出身の娘との恋愛を経て、理不尽な差別の現実と人間の尊厳の間で葛藤する姿を描きます。
監督:前田和男 出演者:間宮祥太朗(瀬川丑松)、石井杏奈(志保)、矢本悠馬(土屋銀之助)、高橋和也(風間敬之進)、小林綾子(蓮華寺住職の妻)、竹中直人(蓮華寺住職)、本田博太郎(校長)、大東俊介(高柳利三郎)、七瀬公(勝野文平)、田中要次(丑松の父)、石橋蓮司(大日向)、眞島秀和(猪子蓮太郎)ほか

映画「破戒」解説

この解説記事には映画「破戒」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。

明治時代後期。被差別部落に生まれ育った瀬川丑松は今は亡き父から頑なに決して自らの出目を隠し通せ、誰も信じるなと厳命されていました。師範学校を出、信州・飯山の地で小学校の教師となった丑松は父の戒めを守り続け、教え子や同僚教師たちに決して自らのことを語りませんでした。そんな丑松は子供たちから慕われる存在でした。

そんなある日、丑松は下宿先の宿屋で理不尽な現実に直面しました。丑松は宿の女将から、この宿には部落出身であることを隠して泊まっていた客がいたと告げられ、世間体もあるので全ての部屋の畳を変えるから部屋を片づけてくれと言われました。

宿の外では裕福そうな老人・大日向が人力車に乗って宿を退散しようとしていましたが、人々は大日向に出ていけと罵声を浴びせ、石を投げつけていました。大日向が石にあたって怪我をしたのを目の当たりにした丑松はこの宿を出ていく決意をし、新たに蓮華寺という寺に下宿することにしました。

この頃から丑松は活動家・猪子蓮太郎の著書に読みふけるようになっていました。猪子は自ら被差別部落出身であることを公表しており、生まれた場所だけでいわれなき差別を受ける理不尽な世の中に声を上げ続けていました。

同じ出目である丑松は猪子の新たな思想に共感し、心酔していくようになってきましたが、師範学校からの友人であり学校の同僚教師である土屋銀之助はそんな丑松の様子を大変心配していました。丑松と銀之助が勤める学校の校長は保守的な考えの事なかれ主義者で猪子などの新たな思想を毛嫌いしており、銀之助は丑松に、校長には猪子の本を読んでいることを悟られないよう忠告しました。

ある日、丑松らの学校に東京から若き教師・勝野文平が赴任してきました。文平は地方教育を司る行政官の甥であり、かねてから丑松や銀之助を快く思っていなかった校長は文平を重用するようになっていきました。

丑松らの先輩である老教師の風間敬之進はここのところ体調がすぐれず、やむなく遅刻をすることが多くなっていました。敬之進はあと数ヶ月頑張れば恩給がもらえることになっていましたが、とうとう働くことが無理になって早期退職することになりました。丑松は校長に、敬之進のこれまでの功績に免じて特別に恩給を出してやってほしいと掛け合いましたが、校長は規則を盾に譲ろうとはしませんでした。

その夜、敬之進と酒を飲んだ丑松は、蓮華寺住職の養女で丑松の世話をしてくれている志保の実の父が敬之進であることを知りました。敬之進は元々士族の家系でしたが家は貧しく、やむなく志保を蓮華寺に養子として出さざるを得ないほど困窮していました。敬之進は現在日露戦争に出征している長男が戻って来れば少しは生活も安定すると話しました。

丑松は蓮華寺で暮らしているうちに次第に志保に惹かれていました。しかし、丑松は父の戒めを思い出し、何も明かせぬまま彼女への募る想いを封じようと努めていました。

そんなある日、丑松は市議会議員・高柳利三郎の妻が自分と同じ故郷、すなわち被差別部落出身であることを知りました。高柳の妻もまた丑松と丑松の父のことを知っていました。数日後、高柳は蓮華寺にいる丑松のもとを訪ね、妻の出自について黙っていてくれないかと持ちかけてきました。

やがて次の市議会議員選挙が近づいてきました。校長は学校の総意として高柳の支持を表明しましたが、この選挙には対抗馬として猪子が支持する弁護士も出馬していました。

丑松は猪子が全国各地を演説で回っていることを知り、そしてこの飯山でも演説会を開くことを知りました。かねてから猪子の新作が出る度に、自らの出自は明かさぬまま猪子に手紙を送り続けていた丑松は猪子が泊まる宿に向かい、猪子の著作や思想に対する熱い思いをぶつけました。

猪子もまた丑松が自分のような出自の者にも対等に接してくれることに感激しました。丑松はこの時も自らの出目を明かせずにいましたが、次に会う機会があったら話したいことがあると伝えました。

丑松は猪子の演説会に行きました。猪子は「人間はみな等しく尊厳をもつものだ」と人々に呼びかけ、丑松は改めて強い感銘を受けましたが、演説を終えた猪子は高柳が差し向けた刺客に襲撃されて命を落としました。

さらに追い打ちをかけるように、かねてから丑松を快く思っておらず、志保に横恋慕していた文平が旧友との会話のなかで被差別部落に瀬川という名の人物がいたことを知りました。丑松が部落出身であることを薄々感じ取った文平は銀之助以外の教職員らにこの学校に部落出身者がいるという噂を流し、志保にも丑松の悪口を流しました。

猪子の死、志保への許されざる想い、そしていつか自分の出目が明かされてしまうのではないかという不安に丑松は押しつぶされそうになり、塞ぎ込むようになっていきました。

そしてある日、丑松の様子を常に気にかけてきた銀之助はなぜ丑松と志保は互いに惹かれ合っていながら一緒にならないのかと尋ねると、意を決した丑松はとうとう銀之助に自らの出目を打ち明け、今まで黙っていたことを謝罪しました。銀之助は驚きつつも、今まで無神経な発言で丑松を傷つけてしまっていたことを謝罪しました。

丑松は同僚や生徒たちに全てを明かす決意を固めました。銀之助は早まるなと説得しましたが、丑松は既に学校を辞め、飯山を離れる決意を固めていました。

教壇に立った丑松は、生徒たちに自分は被差別部落出身であることを告白しました。続けて丑松は涙を流しながら、生徒たちが大人になった時にこの学校に瀬川という教師がいたこと、瀬川が伝えてきたことを思い出してほしいということ、自分は卑しいと言われる身ではあったけれどもみんなには常に正しいと思うことを伝えてきたことを語りました。生徒たちも涙を浮かべながら丑松の話に聞き入り、中には辞めないでほしいという生徒もいました。

学校を辞めた丑松は飯山の地を捨て、東京で再び教師として再出発することにしました。そこに銀之助が志保を連れて見送りに現れ、志保は全てを知ったうえで丑松と一緒になるつもりだったことを明かしました。

以上、映画「破戒」のあらすじと結末でした。

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