シスター 夏のわかれ道の紹介：2021年中国映画。増え続ける人口を抑制するため、一人っ子政策を1979年から2015年まで敷いていた中国を舞台に、一人っ子政策により両親と疎遠になっていた女性が突然見知らぬ弟を押し付けられ、弟との生活か夢を追うか選択を迫られる過程と姉弟の絆を描いたヒューマンドラマです。
監督：イン・ルオシン 出演者：チャン・ツィフォン（アン・ラン）、ダレン・キム（アン・ズーハン）、シャオ・ヤン（ウー・ドンフォン）、ジュー・ユエンユエン（アン・ロンロン）ほか
映画「シスター 夏のわかれ道」解説
この解説記事には映画「シスター 夏のわかれ道」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
中国・成都。20代半ばの女性アン・ランは病院で看護師として働いていました。しかし、医師が看護師を雑用係のようにこき使う日常にうんざりしていたアン・ランは、将来は医師となるために北京にある医療大学院への入学を目指して仕事のかたわら勉学に励む日々を送っていました。
そんなある日、アン・ランは離れて暮らす両親が交通事故で死亡したことを知らされ、葬儀に参列しました。アン・ランは中国が2015年まで敷いていた「一人っ子政策」の影響で両親と疎遠になっており、叔母のアン・ロンロンに預けられて育ったのです。アン・ランはそこで、今まで存在すら知らなかった6歳の実弟アン・ズーハンと出会いました。
アン・ランは女として生まれたため、男の子を欲しがっていた両親から疎まれていました。一人っ子政策下では子供は原則として1組の夫婦に対して子供は1人のみと制限されていましたが、特例として障碍者のいる家庭はもう1人子供を持つことが許されていました。両親はアン・ランを障碍者だと偽ってズーハンをもうけたのです。
ロンロンら親戚たちはズーハンは姉であるアン・ランが育てるべきだと主張し、アン・ランはいきなり今まで一度も会ったことのない年の離れた弟の面倒を見なければならなくなりました。アン・ランはズーハンを養子に出すことを決意、養子縁組が成立するまでは仕方なく面倒を見ることにしました。
アン・ランは両親の家を譲り受け、当面の間ズーハンと一緒に暮らすことにしました。やがて両親の喪が明け、アン・ランは仕事に復帰することになりましたが、まだ幼いズーハンを一人家で留守番させることに不安を感じ、幼稚園に通わせつつ叔父のウー・ドンフォンに頼むことにしました。前妻と離婚し、アン・ランと同じ年頃の娘を持つドンフォンでしたが、彼は賭け麻雀にどっぷり浸かった遊び人であり、信用できない人物でしたが、他に頼れる人間はいなかったのです。
両親に邪険に扱われたアン・ランとは異なり、両親の愛情をたっぷり受けて育ったズーハンはわがまま放題で、せっかくアン・ランが用意したご飯を気に入らないと巻き散らかすなどして散々アン・ランをてこずらせてしまいました。ズーハンはまだ両親が死んだことを理解していない様子でした。
アン・ランは両親の事故に関わった相手と会い、問い詰めましたが、事故の原因は父が心筋梗塞を発症したためだということが判明しました。いきなり慣れない子育てを押し付けられたアン・ランの苛立ちは募るばかりでした。
アン・ランは同じ病院に勤める男性医師と交際していました。アン・ランは彼氏と二人で一緒に北京に行く約束をしていましたが、彼氏は両親にまだそのことを言えないでいました。アン・ランは彼氏の煮え切らない態度に不満を抱き、二人の関係はギクシャクしてしまいました。
アン・ランはようやく養子縁組に応じてくれる夫婦とめぐり合いました。夫婦はズーハンを一目で気に入りましたが、この話を知ったロンロンら親戚たちの差し金により養子話は破談にされてしまいました。
誰にも相談できず、鬱憤だけが溜まる一方のアン・ラン。そんなある日、ズーハンは怪我をしてしまい、病院に運ばれて手当てを受けました。アン・ランはズーハンと一緒に帰路についたところ、これまでわがまま放題だったズーハンが姉は母の匂いがすると初めて心を開いてきました。ズーハンは突然両親を失った哀しみと不安を一身に受けているのだと感じたアン・ランは大いに揺さぶられました。
ある日、アン・ランは養子縁組破談の件で仲違いしていたロンロンの過去の話を聞きました。ロンロンは自分の弟、すなわちアン・ランとズーハンの父のために進学を諦めざるを得なかったこと、モスクワまで出稼ぎに行っていた時も弟のために呼び戻されたことなどを語りましたが、アン・ランはロンロンの息子から暴力を受けていたこと、着替えているところをロンロンの夫に覗き見されたことなどを挙げてその場を去っていきました。
夢に向かって踏み出したいアン・ランは病院を辞め、家を手放し、両親に逆らえない彼氏とも別れました。そんな矢先、ズーハンは自ら養子先を見つけたと言い出しました。
ズーハンは幼稚園の同級生を通じ、自ら養子を欲している夫婦に連絡をつけたのです。アン・ランは状況を理解できぬまま幼稚園に乗り込みましたが、ズーハンは事情については語らず、養子になるという決意に揺らぎはありませんでした。ズーハンは自分がいてはアン・ランの足を引っ張ってしまうと考えたのです。
アン・ランは仕方なく、ズーハンを養子に出すことに同意しました。ズーハンを引き取ってくれる夫婦は裕福な家柄のようでした。アン・ランは家やズーハンのおもちゃを売った金を養育費として持参し、ズーハンは夫婦の家のベランダで遊んでいましたが、その表情はどこか浮かない様子でした。
夫婦はアン・ランに、今後一切ズーハンと会わないという誓約書へのサインを求めてきました。ペンを手にしたアン・ランは深く悩んだ末に養子縁組を断念し、ズーハンを連れて帰ることにしました。アン・ランは夫婦に頭を下げ、ズーハンと共に家を飛び出しました。二人が本当の意味で姉弟になった瞬間でした。
以上、映画「シスター 夏のわかれ道」のあらすじと結末でした。