映画「ザ・ホエール」ネタバレあらすじ結末と感想

ザ・ホエールの紹介:2022年アメリカ映画。劇作家サミュエル・D・ハンターが2012年に発表した同名舞台劇を『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督が映画化した作品です。家族を捨て、極度の肥満に陥った男が自らの死期を悟り、疎遠になっていた娘と寄りを戻そうとするのですが・・・。主演のブレンダン・フレイザーは本作で第95回アカデミー主演男優賞を受賞しています。
監督:ダーレン・アロノフスキー 出演者:ブレンダン・フレイザー(チャーリー)、セイディー・シンク(エリー)、ジェシー・シンク(子供の頃のエリー)、ホン・チャウ(リズ)、サマンサ・モートン(メアリー)、タイ・シンプキンス(トーマス)、サティア・スリードハラン(ダン)ほか

映画「ザ・ホエール」解説

この解説記事には映画「ザ・ホエール」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。

家族を捨て、同性の恋人アランの元に走った男・チャーリー。その後、アランが亡くなり、そのショックから逃れるようにチャーリーは家に引き籠もっては暴飲暴食の日々を送り、40代となった今ではチャーリーは体重272キロの極度の肥満体になっていました。

そんなチャーリーは唯一の友人である訪問看護師のリズの手助けを借りながら、大学のオンライン授業でエッセイの書き方を指導する講師として生計を立てていました。しかし、自分の太った姿を世間に晒さぬよう、カメラが故障して自分の姿が映らないということにしていました。

そんなある月曜日。キリスト教系の新興宗教「ニューライフ教会」の宣教師トーマスがチャーリーのもとを訪れた際、チャーリーは発作を起こしていました。

すぐさまリズが駆け付けました。リズはこれまで何度もチャーリーに通院もしくは入院を勧めてきたのですが、チャーリーは金も保険証もないと言い張って断ってきたのです。リズはその場にいたトーマスがニューライフの者であることを知るや彼を追い返しました。リズは父がニューライフ信者であり、この宗教については快く思っていませんでした。

その翌日の火曜日。チャーリーは自分が鬱血性心不全であり、ステージ3相当で自分の余命は長くないことを知りました。そこでチャーリーは約10年も音信不通だった娘エリーを呼び寄せました。

チャーリーはエリーが8歳の時にアランと男同士の恋に落ちてしまい、妻メアリーとエリーを捨てていってしまったのです。久しぶりに再会したエリーは17歳になっていましたが、未だにチャーリーを憎んでいました。家族を捨ててからもなおチャーリーはエリーに未練を残していましたが、メアリーは決してエリーをチャーリーに会わせようとはしてこなかったのです。

チャーリーは帰ろうとするエリーに自分の有り金12万ドルを全てやると言い出しました。この頃のエリーは家庭でも学校でもトラブルを抱えており、先日も実習仲間の悪口を投稿して停学処分になったばかりでした。

すっかり心が荒んでいたエリーに、チャーリーは勉強を見てやると持ちかけました。エリーは自分のレポートが良い成績になるよう書き直しほしいと頼み、チャーリーは書き直すことの条件としてエリーも自分にエッセイを書いてほしいと頼みました。エリーは足早に去っていきました。

水曜日。この日もエリーが訪ねてきました。しかし、チャーリーがまだ書き直しに手を付けていないことを知るや足早に帰って行きました。

入れ替わるかのように現れたトーマスは何とかしてチャーリーの役に立とうとしましたが、またもや訪問してきたリズに追い出されました。その際、リズはチャーリーと付き合っていたアランは自分の兄であることをトーマスに打ち明けました。アランは元々ニューライフの宣教師だったのですが、チャーリーとの出会いを機に脱会したため父や教会から辛い仕打ちを受け、心を病んだ末に非業の死を遂げたのでした。

木曜日。またもやチャーリーのもとを訪れたエリーはチャーリーに睡眠薬入りのサンドイッチを食べさせました。チャーリーが眠っている間、トーマスが訪ねてきました。やがてエリーは大麻を吸い始め、誘われるかのようにトーマスも吸い始めました。

実はトーマスもまた教会と一悶着を起こしている最中でした。故郷での布教活動がひたすらパンフレットを配るだけに終始していることに疑問を持ったトーマスは教会に相談しようとしましたが相手にされなかったということです。トーマスは教会から金を盗んで逃げて来たということで、今やその金も無くなりかけていました。エリーはトーマスの写真を撮り、彼の発言の一部始終を密かに録音しました。

その時、リズがメアリーを連れて訪ねてきました。リズはエリーがチャーリーに睡眠薬を飲ませたことに激怒しましたが、程なくしてチャーリーは目を覚ましました。チャーリーはエリーにレポートを渡すと、エリーはそそくさにその場を立ち去っていきました。

しばしの間、チャーリーとメアリーとの間には気まずい空気が漂いました。メアリーはエリーが「邪悪な子」に育ってしまったと嘆き、チャーリーに今のエリーを見せたくないがために今まで一度も会わせなかったことを明かしました。

元夫婦の会話を聞いていたリズはチャーリーがこっそりと預金を貯め込んでいたことを知り、その金さえあればきちんとした医療を受けられるはずだったと嘆きました。しかし、チャーリーはあくまでも自分のことよりもエリーのために金を残そうと考えていたのであり、メアリーはチャーリーは金、自分は子育てでそれぞれベストを尽くしたのだと語りました。

やがてその場にいた全員が引き上げていき、ひとり残ったチャーリーは冷蔵庫から食料品を取り出して食べていたところ、そこにトーマスが戻ってきました。エリーは先程撮った写真と音声データをニューライフ教会とトーマスの両親のもとに送ったそうで、エリーがどんな意図でやったのかはわからないけど両親も教会も許してくれたというのです。チャーリーはトーマスに両親のもとに戻るよう促しました。

金曜日。チャーリーはこの日のオンライン授業を最後の授業にすることにしました。生徒たちに正直な文章を書くよう呼びかけたチャーリーは、今まで決して見せたことのない自分のありのままの姿を見せ、授業が終わるとパソコンを破壊しました。

そこにリズが訪ねてきました。チャーリーはトーマスが自分のせいでアランが死んだと話していたことを伝えると、リズはチャーリーがアランのことを愛してくれていなければアランはもっと早く死んでいただろうと返しました。続けてチャーリーは、エリーがトーマスの写真と音声を教会と家族に送ったのは彼を家に返すためにやったのだとだろうと語りました。

リズが帰った後、エリーがやってきました。チャーリーに書き直してもらったレポートが不合格になったということでした。とういうことかと説明を求めるエリーに、チャーリーは一度声に出して読んでくれと頼みました。

このエッセイは実はエリーが数年前に書いたものであり、アメリカの小説家ハーマン・メルヴィルの長編小説『白鯨』に関してのものでした。チャーリーは我が娘のこのエッセイをずっと心の支えにしてきたのです。

チャーリーはエリーに今までのことを素直に謝罪し、エリーには才能があること、そしてエリーは自分の「最高傑作」であることを伝えました。そしてチャーリーはエッセイを読むエリーを見ながら、その巨体を全身全霊込めて立ち上がらせました。それはまさに小説で描かれた白鯨のようでした。

以上、映画「ザ・ホエール」のあらすじと結末でした。

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