映画「ヴェロニカ」ネタバレあらすじ結末と感想

ヴェロニカの紹介:2017年メキシコ映画。山間に住む精神分析医が新しく担当するヴェロニカという若い女性。前任者に連絡が付かぬまま、非協力的な彼女の治療を試みるが、そのトラウマに分析医精神は摩耗していく…。
監督:カルロス・アルガラ、アレハンドロ・マルティネス=ベルトラン 出演者:アルセリア・ラミレス、オルガ・セグラ、ソフィア・ガルサ、ほか

映画「ヴェロニカ」解説

この解説記事には映画「ヴェロニカ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。

ロッシ教授の紹介で、通常の10倍の大金でヴェロニカ・デ・ラ・セルナのカウンセリングを引き受けた、山間に住むとある女性精神分析医。到着した彼女に客用の寝室を与え、一緒に住みながら治療を始めようとするが、当のヴェロニカは治療に非協力的だった。前任のロッシ教授には連絡が取れず、病状の記録されているはずのカルテもないまま、煙草を代わりにあげる約束をして一つだけ質問に答えた。

ヴェロニカは毎晩、子供の頃の森で猟師に撃たれた鹿の首に鎖を巻く夢を見る。ただ、その夢は怖くも悲しくもなく、興奮して起きて自慰をするのだと語った。おそらく、トラウマや死と欲求の発現だと分析医は予想した。

そして二人は食事を共にするが、分析医が手ずから栽培したシイタケ料理を彼女は拒否した。

ある日、ヴェロニカの子供の頃の話を聞こうとすると、彼女は話す事はないと一蹴するも、森の中の家に母と一緒に出掛けた事や、父親がいない事、母親との最後の記憶は森の家に行った事だと話し、分析医が庭に持っているシイタケを栽培している小屋に興味を示した。そして見に行こうとした彼女は、鍵のかかっている扉で怪我をしてしまった。

ロッシ教授には相変わらず連絡が取れず、ヴェロニカの最後の診察は一カ月前だと言った。

分析医は改めて小屋を開け、ヴェロニカに栽培しているシイタケの説明をした。

ヴェロニカは相変わらず反抗的で、自分がされた質問を分析医に質問し、分析医の手に指輪の跡がなく、未婚もしくは結婚しない事を指摘し、更に女性同士の性行為についての話をした。

分析医は暫定的結果として、過去の心的外傷による解離性健忘とし、催眠誘導で過去の記憶を引き出そうとすると、森の家と母の記憶、倉庫が出てくるものの、潜在意識がヴェロニカを守ろうとして、トラウマの核心には至れなかった。しかし、母親からの性的虐待による解離性健忘とサディズムの発現があり、薬の処方が必要だとの結論に至った。

そして、連絡の取れないロッシ教授が実は行方不明になっていると知った。

夜、眠っていると裸のヴェロニカがベッドに入って来て関係を持ってしまうという現実とも夢ともつかない経験をした分析医は、混乱したままシイタケの菌を植えて落ち着こうとするが、手が滑ってドリルで怪我をしてしまった。

そしてその日、本棚の本について聞いてくるヴェロニカが自分の寝室にあるはずの本を持っている事から、昨夜自分の部屋に入って来たのか問い詰め、首を振りつつも昨日の「診察」はよく効いたと言うヴェロニカに、ロッシ教授の行方不明についても問いただし、彼女の症状を嘘だと思った分析医は、治療を中止し、ヴェロニカを追い出した。

しかしその後、自分の寝室に、件の本を見つけて混乱し始めた分析医は、歴代の心理学者・哲学者について語り録音し、眠りに落ちた。

夜半に物音で起きた分析医は、シイタケの小屋が開いている事に気づき、拳銃を持ってそこへ行くと、ヴェロニカがおり、もみ合いの末、拳銃で撃ってしまった。そしてその死体を拳銃と共に森に埋め、浴室で汚れを落としながら泣き崩れた。

居間に戻ると、埋めたはずのヴェロニカの声が聞こえ、その幻想に追い詰められる分析医。行方不明のアレクサンダー・ヴァン・ロッシ教授は、ヴェロニカ・デ・ラ・セルナのアナグラムで、ヴェロニカのトラウマはここで起きた事で「分析医」は彼女の潜在意識の産物で存在しないと、埋めたはずのヴェロニカが断言し、居間には一人ヴェロニカが残った。

シイタケ栽培をしていた母を、鎖で絞殺した記憶のよぎるヴェロニカは、小屋の奥の水槽に氷漬けにされた母親の死体を見つけた。

電話線も切られたこの山間の家には、はなからヴェロニカしかいなかったのだ。

以上、映画「ヴェロニカ」のあらすじと結末でした。

視点となる精神分析医の名前は、徹頭徹尾語られることがなく、白黒の画面なのだた仕様だろうと、はじめはあまり疑問は抱かない。しかしヴェロニカと分析医が表裏一体だったと明かされた途端に画面に色が戻り、それまでの話がヴェロニカと乖離したもう一人の存在、分析医の視点からの物だという差異がはっきりと演出されている。女性同士の腹の読み合いから、治療を行う側の分析医が、ヴェロニカの回想につられて追い込まれていく様は、静かな狂気をはらみ、恐ろしいほど迫ってきた。

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