映画「ユリシーズ(1954年)」ネタバレあらすじ結末と感想

ユリシーズの紹介:1954年イタリア映画。古代ギリシャの詩人ホメロスの長編叙事詩「オデュッセイア」を映画化した歴史スペクタクル・冒険アクション巨編で、トロイ戦争の英雄であるユリシーズ(別名:オデュッセウス)の苦難に満ちた冒険の旅を描きます。
監督:マリオ・カメリーニ 出演者:カーク・ダグラス(ユリシーズ)、シルヴァーナ・マンガーノ(ペネロペ/チルチェ(二役))、アンソニー・クイン(アンチノオ)、ロッサナ・ポデスタ(ナウシカア)、シルヴィー(エウリュクレイア)、フランコ・インテルレンギ(テレマコ)、エレナ・ザレスキ(カサンドラ)ほか

映画「ユリシーズ(1954年)」解説

この解説記事には映画「ユリシーズ(1954年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。

古代ギリシャの時代。イタカの王である英雄ユリシーズ(カーク・ダグラス)は、トロイ戦争で自ら発明した木馬でトロイを陥落させる戦功を上げ、軍団を率いて船で故郷イタカへ凱旋の途についていました。

しかし、ユリシーズ軍の船は暴風雨に遭い、ユリシーズは気が付くと全ての記憶を失った状態でただ一人、見知らぬ国の浜辺に打ち上げられていました。

ユリシーズはこの国の王アルチノオ(ジャック・デュメニル)の娘ナウシカア姫(ロッサナ・ポデスタ)に助けられ、王宮に迎え入れられました。やがてこの国に慣れ親しんでいったユリシーズは、御前試合で勇敢な戦いぶりを見せたことからアルチノオに気に入られ、互いにナウシカアと惹かれ合っていきました。

そして迎えたナウシカアとの結婚式当日、ユリシーズは自分が漂流してきた浜辺に赴くと失われていた記憶を徐々に取り戻していきました。

時を同じくして、イタカの国ではユリシーズの妃ペネロペ(シルヴァーナ・マンガーノ)が長いこと帰らぬ夫の留守を守っていましたが、そんな彼女の美貌とユリシーズの持つ莫大な財産を狙って腹黒い男たちが執拗に求婚を迫っていました。それでもペネロペは頑なにユリシーズの帰還を信じていましたが、勇猛な戦士アンチノオ(アンソニー・クイン)の強引な求婚に遂に根負けしてしまい、弓の競技を開いてその勝者と結婚すると約束してしまいました。

ユリシーズとペネロペの子である王子テレマコ(フランコ・インテルレンギ)は、そんな母の姿に深く失望し、父が戻って来るのを切望していました。

その頃、完全に記憶を取り戻したユリシーズは、王宮でアルチノオとナウシカアに自らが辿った苦難の冒険話を聞かせていました―――。

―――それはトロイ戦争終結後のことでした。勇敢に戦い、トロイを陥落させたユリシーズはトロイの守護神ポセイドンの怒りを買ってしまい、非常に強い呪いをかけられてしまったのです。ユリシーズ軍の船は帰還の途中で激しい嵐に見舞われました。ユリシーズ一行は戦争で得た金銀財宝を海に捨てることで窮地を脱し、とある島に辿り着きました。

島の奥には大きな洞窟があり、その内部では羊が飼われており、食糧も貯蔵されていました。ところが、洞窟の主はポセイドンの息子である一つ目の巨人ポリュペモスであり、ポリュペモスは巨大な岩で洞窟の出口を塞いで中にユリシーズたちを閉じ込めてしまったのです。

そこで一計を案じたユリシーズはあらかじめ収穫しておいたブドウでブドウ酒を作り、ポリュペモスに飲ませてみました。するとポリュペモスは非常にブドウ酒の味を気に入り、ユリシーズたちはこれをいいことに大量にブドウ酒を作ってポリュペモスに飲ませました。

そしてポリュペモスはすっかり酔い潰れて眠り出し、その隙を狙ってユリシーズたちは先の尖った丸太をポリュペモスの一つ目に突き刺しました。ポリュペモスはたちまち激痛のあまり暴れ始め、その衝動で洞窟に僅かな亀裂が生じました。ユリシーズたちはその亀裂から外に逃げ出し、船に乗ってポリュペモスの島を脱出しました。

ユリシーズの船は、その魅惑の歌声で船乗りたちを難破させるといわれる海の魔物セイレンのいる海域に差し掛かりました。やがてどこからともなくセイレンの歌声が流れ、ユリシーズは部下たちに耳を塞ぐよう命じましたが、自分はついその歌声を聴いてしまいました。

すると、ユリシーズの耳に聴こえてきたのは遥か彼方の故郷に残してきたペネロペとテレマコの声でした。愛する妻子の声に惑わされそうになったユリシーズは部下たちに船を止めるよう命じますが、部下たちは耳を塞いだままでユリシーズの声に応答しようがありませんでした。

やがて船は何とかセイレンの海域を脱し、ユリシーズはペネロペとテレマコの声がセイレンの歌声によるものだと気づいて落胆しました。

ユリシーズ一行が辿り着いたのはとある島でした。そこでユリシーズを待ち構えていたのは、ペネロペと瓜二つの容姿をした魔女チルチェ(シルヴァーナ・マンガーノ)でした。長きにわたり孤独な日々を過ごしていたチルチェはトロイ戦争の英雄ユリシーズと出会えたことを大変喜び、警戒していたユリシーズもチルチェの美貌に魅了され、すっかり虜になってしまいました。

もはや島を出る気すら奪われたユリシーズに愛想を尽かした部下たちは、彼を島に残して出航しましたが、ポセイドンが引き起こした嵐に遭って遭難してしまいました。ユリシーズは自らの過ちと愚かさに気付き、ようやく島を出る決意を固めましたが、チルチェは永遠の命を与えると告げてなおも島に引き留めようとしました。

ユリシーズは命に限りのある人間として誇り高く生きたいとチルチェの申し出を断り、彼女の誘惑を振り切って島を脱出しました。その航海の途中、ユリシーズは嵐に見舞われ、気が付くとこの国に流れ着いていたのです―――。

―――ユリシーズの話を聞き終えたアルチノオは彼に帰国の船を与え、ユリシーズはカウシカアに感謝しながら帰国の途に就きました。ナウシカアは深い悲しみに包まれました。

故郷イタカに辿り着いたユリシーズは乞食に扮し、ペネロペと対面を果たしました。自分の正体に気付かないペネロペに対し、ユリシーズはあえて自らの正体を明かさず「ユリシーズは常に妻子のことを想っていた」と伝えました。

ペネロペは長い間ユリシーズを信じて待っていたが、明日に開かれる弓の競技会の勝者と結婚せねばならないことを伝えました。ユリシーズは「ユリシーズは婚礼の日に弓を引き、12の穴を通して的を射た」と語りました。それからユリシーズはテレマコとも会い、彼には自らの正体を明かしてある秘策を伝えました。

翌日、ユリシーズは引き続き乞食に扮したまま競技会の会場に潜り込みました。現れたペネロペは求婚者たちに対し、ユリシーズ愛用の弓を引き、穴を通して的に当てた者と結婚すると宣言しました。アンチノオを始め誰もが失敗するなか、ボロ布をまとったユリシーズが挑戦に名乗り出て、見事に穴を通して的を射抜くことに成功しました。

そしてユリシーズはその場の全ての者たちに自らの正体を明かし、テレマコや忠臣たちと共にアンチノオや求婚者たちを次々と討ち取っていきました。そして戦いを終えたユリシーズはペネロペの元に歩み寄り、「これからは共に穏やかな日々を送ろう」と歓喜の涙を流す愛妻を胸に抱き寄せました。

以上、映画「ユリシーズ」のあらすじと結末でした。

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