映画「帰れない山」ネタバレあらすじ結末と感想

帰れない山の紹介:2022年イタリア, ベルギー, フランス映画。都会育ちの少年ピエトロは山を愛する両親とアルプスの山間にある小さな村グラーナでヴァカンスを過ごし、牛飼いのブルーノと出会う。同い年で「この村最後の子ども」と言われるブルーノはピエトロとは対照的な性格だったが、二人はすぐに親友となった。やがて思春期のピエトロは父親に反抗し、家族や山からも距離を置いてしまう。20年後、父の訃報を受け村に戻ったピエトロはブルーノと再会を果たした。本物の親子さながらにブルーノと自分の父親が一緒に時を過ごしていたことを知ったピエトロは、自分の知らない父の姿を聞かされ自分の人生とも向き合い始める…。原作はパオロ・コニェッティの同名小説。カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞したほか、ダヴィド・ディ・ドナテッロ賞では作品賞を含む4部門で受賞を果たした。
監督:フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン、シャルロッテ・ファンデルメールシュ 出演:ルカ・マリネッリ(ピエトロ)、アレッサンドロ・ボルギ(ブルーノ)、フィリッポ・ティーミ(ジョヴァンニ)、エレナ・リエッティ(フランチェスカ)、クリスティアーノ・サッセッラ(幼少期のブルーノ)、ルーポ・バルビエロ(幼少期のピエトロ)、アンドレア・パルマ(10代のピエトロ)、フランチェスコ・パロンベッリ(10代のブルーノ)、エリザベッタ・マッズッロ(ラーラ)、スラクシャ・パンタ(アスミ)ほか

映画「帰れない山」解説

この解説記事には映画「帰れない山」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。

内気で繊細な少年ピエトロは、両親と共に北イタリアの都市トリノで暮らしていました。

1984年夏。ピエトロは山を愛する両親とともにヴァカンスでモンテ・ローザ山麓のグラーノ村を訪れました。以前は183人の村人がいたこの地域も、今ではたった14人しか住民はいません。そこでピエトロは「この村で最後の子ども」と言われる牛飼いの少年ブルーノと出会いました。

同い年のブルーノは山で生まれ育った野生児で、ピエトロとはまるで対照的な2人でしたが、村で過ごすうちにたちまち親交を深めていきました。

夏が終わるとピエトロはトリノへと帰っていきますが、牛飼いのブルーノはずっと山の生活を続けています。それでもかけがえのない親友であることに変わりありませんでした。

ピエトロの父ジョヴァンニはトリノの工場でエンジニアをしていました。そんな父にとって年に数回の登山は貴重な趣味でした。昔、化学や物理、神話を学んだ父にとって、山は自分の人生の中で大きな存在でした。ある日、ピエトロも一緒に山を登りその雄大さに圧倒されると、都会が恋しいとも思わなくなっていました。

ブルーノの存在は、ピエトロの両親にとっても大切でした。母フランチェスカは、教育を受けていないブルーノのために勉強を教え、父ジョヴァンニもトリノの高校へ通えるよう支援することに決めました。しかし、ブルーノを働かせたい彼の父親は、彼を出稼ぎに連れ出し2人の友情を引き裂きました。

やがてピエトロとブルーノは疎遠になり、店で偶然に顔を合わせても、言葉を交わすことはありませんでした。

青年になったピエトロは思春期を迎え、ジョヴァンニに反抗するようになりました。夏のヴァカンスに山へ行くこともやめてしまいました。せめて大学だけは卒業してほしいと頼むジョヴァンニに、ピエトロは「父さんみたいな人生は嫌だ」と言い放ち家を出て行ってしまいました。

10年が経ち、家族とも疎遠になったピエトロのもとにジョヴァンニの訃報が入りました。ピエトロは31歳になり、自分が生まれた時の父と同じ年齢になっていました。ピエトロはまだ独身で、定職にさえ就いていませんでした。

父の死をきっかけに久々にグラーノ村を訪れたピエトロは、15年ぶりにブルーノと再会しました。ピエトロが村に行かなくなってからも、ジョヴァンニはブルーノと山に登り、時に実父と争ったブルーノに助言もしていました。まるで本物の親子のような存在だったのです。

そこでピエトロは、父がこの理想の土地に家を建ててほしいとブルーノに頼んでいたことを聞かされました。自分の知らない父の姿を知ることとなったピエトロは、口を利いていなかった10年もの歳月を取り戻すために、ブルーノと2人で家を建てることを決意しました。

家は4か月で完成しました。ブルーノは叔父が失敗した牧場を再建し酪農をやりたいと語るものの、ピエトロは自らの未来が見えずにいました。

しかしそんなピエトロも、訪れたネパールのヒマラヤ地方で自分の居場所を見出しました。著書の出版も叶え、作家として出発したのです。
同じ頃、ブルーノは牧場を手伝いにきたピエトロの友人ラーラとの間に娘アニータが生まれ、彼もまた幸せな時を過ごしていました。

ところがその幸せは長くは続きませんでした。ブルーノの牧場が経営難に陥り2人が多額の借金を背負っていることを知ったピエトロは、ブルーノへ援助を申し出ましたが、ブルーノから激しく拒絶されてしまいます。

ネパールに戻ったピエトロはその後、現地で教師をしているアスミと出会い、順調に関係を育んでいきましたが、ブルーノから電話が入り、牧場が差し押さえられたことと、ラーラが娘を連れて実家へ帰ってしまったことを知らされます。

季節は冬でしたが、ピエトロは急いでグラーノへ戻りました。ブルーノは雪で覆われた山小屋に籠り、原始的な生活を送っていました。ピエトロは彼の生活を立て直させようと説得を試みましたが、ブルーノは激怒しピエトロを追い払ってしまったのです。その後2人は和解しますが、ブルーノは「山が俺を傷つけたことはない」と言い、ピエトロを送り出しました。

ある日、1台のヘリコプターから救助隊が山小屋へ降り立ちました。大寒波で大雪が降った後、ブルーノの従兄弟が彼の消息を心配して救助を要請したのです。しかし小屋の中には誰もいませんでした。

「春になり雪が解けた頃に遺体が見つかるだろう」ラーラは救助隊の言葉をピエトロへ伝えました。
「これはブルーノが望んだことだと思う?」涙ながらに訪ねるラーラにピエトロは否定しましたが、本心ではありませんでした。

以上、映画「帰れない山」のあらすじと結末でした。

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