映画「ホワイト・ノイズ」ネタバレあらすじ結末と感想

ホワイト・ノイズの紹介:2022年アメリカ, イギリス映画。アメリカのとある町で化学物質の流出事故が発生。大学でヒトラー学科を教える教授のジャックは妻と子供たちの命を守るために車で避難所へ向かう。その途中で有毒物質を浴びたジャックは死を叩きつけられ錯乱していくが、周りでは変わらぬ日常が続いていく…。原作は同名のドン・デリーロの小説。ベネツィア国際映画祭コンペティション部門出品作品。
監督:ノア・バームバック 出演:アダム・ドライバー(ジャック・グラドニー)、グレタ・ガーウィグ(バベット・グラドニー)、ドン・チードル(マーレイ・シスキンド)、ラフィー・キャシディ(デニス)、ジョディ・ターナー=スミス(ウイニー)、アンドレ・ベンジャミン(ラッシャー)、サム・ニヴォラ(ハインリッヒ)、メイ・ニヴォラ(ステフィ)、ラース・アイディンガー(ミスター・グレイ)、バルバラ・スコヴァ(シスター)ほか

映画「ホワイト・ノイズ」解説

この解説記事には映画「ホワイト・ノイズ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。

アメリカのとある町。
大学でヒトラー学科を教えるジャックは、4回目の結婚の末、現在は妻バベットと4人のそれぞれの連れ子と幸せに暮らしていました。

そんな中、長女デニスはバベットが怪しい薬“ダイラー”を飲んでいることを目撃します。彼女はその薬について調べましたが、分かったのは市販薬ではないということのみ。バベットは家族に隠れてダイラーを飲み続けていました。

ある日、ジャックの自宅のはるか先で化学薬品を積んだ列車の事故が発生。有毒な物質を含んだ雲は徐々に町に近付き、警察から避難命令が発令しました。最初は楽観していたジャックも大急ぎで荷物をまとめ一家を車に乗せました。出遅れながらも道に出ると避難所までは長い渋滞が続いていました。

避難所へ向かう途中、ジャック一家は無人のガソリンスタンドに寄りました。ジャックが給油している間にも、有害物質を含んだ黒い雲は空に広がり、頭上を黒く覆っていきました。ラジオからの情報は不安定で、いまだ化学物質の正体はつかめていません。車内では長男のハインリッヒが得意げにナイオディンDという毒物の話をしています。ジャックは同僚のマーレイが言っていた「家族はデマの温床だ」という言葉を思い出していました。

避難所へ到着すると、ハインリッヒは住民の中心に立ち、ナイオディンDについて力説しています。ジャックは外気に触れていたため、別の場所で検査をすることになりました。若いボランティアスタッフはジャックに被災しているだろうと言い放ちました。

汚染の心配は消え、世の中は何事もなかったかのように動いていました。避難していた人々はみな帰宅し日常を取り戻しつつある中で、ジャックだけは毒にさらされた恐怖と不安に襲われていました。病院では明言をさけた表現で説明を受けるジャックでしたが、余命が近いことを悟っていました。

一方、バベットの様子にも変化がありました。明るくなんでも話してくれていた彼女は、無口になり毎日スウェットのまま窓の外を眺めては涙を流していました。ついにジャックはバベットに薬のことを問い詰めました。隠そうとしていたバベットもやがて重い口を開きはじめました。

彼女は少し前から病に侵され、自分ではどうにもならなくなっていました。そんな折、新聞でダイラーの治験ボランティア広告を見つけ、応募したとのこと。その病とは、“死への恐怖”でした。「あなたのことは愛しているけれど、どうしても恐怖に負けてしまう」と。結局、治験は効果が見られず打ち切りになりましたが、研究員の1人でミスター・グレイと名付けた男と個人契約を結び、バベットは薬を受け取っていました。しかも彼女の身体と引き換えに。ジャックは怒りに震え「化学物質を浴びて余命が近い。死ぬ恐怖を感じているのは俺のほうだ!」と言いました。今にも発狂しそうなジャックを「バカな真似はしないで」と制止するバベット。ジャックは無言で部屋から去りました。

自分自身の死への恐怖をダイラーで払拭したいと考えるようになったジャックは躍起になってガレージでゴミ箱をひっくり返し、デニスが捨てたダイラーを探します。どれだけ探しても見つからず、死に囚われたジャックは発狂してしまいます。

ミスター・グレイの居場所を突き止めたジャックは、銃を隠し持ち指定されたモーテルへと向かいました。その男はジャックを見ると、「ダイラーは効果がなかった」と言い、バベットをバカにするような発言を繰り返して嘲笑っていました。怒りがこみあげてきたジャックは、ミスター・グレイをバスルームへと追いやり、拳銃の引金を引きました。銃弾はミスター・グレイの胸部を貫きました。

我に返ったジャックは慌てながら、手に持っていた銃の指紋を拭き取り自殺に偽装するためにミスター・グレイの手の中におさめました。ところが、死んだはずのミスター・グレイが息を吹き返し、ジャックにその銃口を向け発砲。ちょうどそこに事態を心配したバベットがやってきて、ジャックをかすめた銃弾がバベットにも流れていきました。

ジャックとバベットは共に負傷はしたものの命に別条はありませんでした。2人は薬の過剰摂取で錯乱しているミスター・グレイを車に押し込め救急病院へと急ぎました。ほどなくして教会病院に着き、重傷のミスター・グレイはすぐ診察台へ運ばれ、軽傷のジャックたちはそれぞれ隣同士のベッドで処置を受けました。バベットは壁に貼られているイエスの絵画を見てシスターに訪ねました。「死後の世界はあるの?」と。

シスターはその質問に、血相を変え答えました。
「神を本気で信じているの?馬鹿じゃないの?あんたらは私達を見下しつつもその存在に安心感を求めている。自分は信じていないけれど、”神を信じる善良な人間”はいてほしいと思っている。私たちはその為に存在してるんだ」と。

後日、スーパーマーケットではいつも通り買い物をしているジャック一家の姿がありました。まるで何事もなかったかのように。

以上、映画「ホワイト・ノイズ」のあらすじと結末でした。

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